こう言っちゃなんだが、ウィーン・フィルのベースは頼りない。それがウィーン・フィルの大きな特徴の一つとなっているわけだが、わざと力を抜いているのか、もともと快活さに欠けるのか、判然としないところがある。ほんとのところどうなのだろうか、いつか思いきって面と向かって訊ねてみたいものだ。
そんな優雅なベースパート員の中にあって、「こいつは只者じゃないぞ」と思わせるのが、我々が「新聞先生」と呼んでいるところのヴォルフラム・ゲルナーだ。
ウィーン・フィル全体を見回してみても、彼ほど地味な人はいないのではないか。オットー・ネシツィウス(2nd.Vn)だって、もうちょっと目立っていると思う。小顔なのと、アクションが控えめなのと、隅っこのプルトが好きでよくひとり「はみプル」で弾いているのとが相まって、彼のファンである我々でさえ、探すのに一苦労するほどだ。
彼の特徴は、難しいパッセージでも端正な顔をみじんも崩さずに、滑らかなフィンガリングで弾きこなしていること。その際、前傾姿勢になったりすることはほとんどない。でもよく見るとリズム感が抜群で、密かにノリノリで弾いている。ジュピターのフィナーレを、まるでなじみのカフェで新聞を読んでいるかのように平然と弾きこなすのを見て、我々は唖然としたものだった。「新聞先生」の名はそこからきている。
さらに付け加えると、彼は「おいしい」演奏会に出演することが比較的多かったように思える。なかなかしたたかな人と見た!
1931年5月15日ウィーン生まれ。父テオドールもウィーン・フィルのヴィオラ奏者。ウィーン国立歌劇場に63年10月から、ウィーン・フィルには67年9月から所属。