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巡礼の旅 第4話 - 音楽の都の美術館で(前編) - |
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ヘッツェルの墓参りから一夜明けた。今日は雪のかわりに時折冷たい雨がぱらついている。せっかくヨーロッパに来たのだから一度は名画鑑賞でもしよう、ということでTとともに美術史博物館に出かけた。地下鉄を降り、かつて宮廷美術館だったという豪華な建物に到着。しかし巨大すぎてどこが入り口か分からず、迷って周りをうろうろしてしまった。
やっとのことで中へ入ると、エントランスは吹き抜けになっていて上から光が差し込んでいる。さっそく正面の大階段を上り展示室へと向かうことにする。中は十分暖かいので、コートと荷物を途中のクロークで預け身軽になって2階へ。上がりきったところは広々したホールになっていて、先ほど下から見上げた中央吹き抜けの周りをたくさんのテーブルや椅子が囲んでいる。カフェ・ゲルストナーの支店だ。柔らかな間接照明、高い天井、正面に大きく採った窓からはマリア・テレジア広場の眺め。最高に贅沢な空間の使い方だ。あとで来ることにしよう。 |
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さて、好きに観てまわれるように、Tと私は別行動することにした。それぞれ反対側の入り口から入る。私がイタリア・スペイン・フランス絵画側から、Tが反対廻りでネーデルランド・ドイツ絵画のコーナーからスタートし、途中で落ち合えるようにした。展示数は膨大で、私が入った方はとにかく宗教画が多い。十字架を背負ったキリストや、聖母や僧侶たちで埋めつくされている。全部観てまわるにはかなり時間がかかりそうだ。ひたすら次へ進むことにする。
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![]() 美術史博物館のエントランスから |
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ふと気がつくと3時をまわっている。疲れたのでそろそろお茶にしよう。Tのところへ行って「キリの良いところで出ておいで」と声を掛け、先に展示室から出ることにした。戸口のところまでくると私の少し先にいた10歳くらいの女の子が重たい扉を押さえて、開けて待ってくれている。思わず駆け寄り、小声で "Danke !" と言って扉を支えると、ちょっぴりはにかんだ笑顔で "Bitte !" と返してくれた。ドイツ語会話集の一番最初に載っているような簡単な会話だが、はじめて自然な内容と間を伴ってできた気がした。そして子供にまで浸透するこのマナーの良さ!小さな感動の余韻に浸ると同時に、筆者が関西に来て間もない頃のことを思い出さずにはいられなかった。私はその時某百貨店入り口のドアを押さえていたのだが、老若男女問わず皆みごとに無視して通り過ぎていった。私はしばし自分が透明人間になったような錯覚におちいったものだった。えらい違いだ。
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Tが来たのでヤウゼ(ウィーンの午後のブレイクタイム)にする。2月とあってカフェも空いている。ショーケースの中には繊細で魅惑的な品々、甘党でなくてもあれこれと悩んでしまう。昼食はとっていないが、ケーキはその日の筆者には重たく感じられたので、小さなサンドウィッチを2つと小さなチョコレート菓子を2つ、それにエスプレッソ(大)を頼んで、吹き抜けのわきにゆったりと席を取る。やがてきちんとした身なりのヘル・オーバー(カフェの給仕人)が注文の品をうやうやしく運んできた。
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絶品!カフェ・ゲルストナーのプチ・サンド |
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かくて午後の至福の時間が訪れた。ああ、ウィーンにいるんだなあ、とまったりしていると、突如、ばりばりばり、と建物を揺るがさんばかりの轟音。雷だ。でかい音だなあ、やはり石造りの建物は響きも違うかもしれん、などと考えていたら、まばらに座っていた客たちが皆窓際へ集まった。そして窓から覗き込むようにして外を見ている。しかしただ雷が鳴り、地面へ激しく雨が叩き付けているだけである。暇を持て余していただけなのか、傘がなくて困ったのか、それともこんな天気が珍しいのか、結局謎だった。優雅なカフェでもう一枚、動く風景画を鑑賞、といったところだろうか? お茶を済ませ、Tとは後でまたカフェのところで待ち合わせることにして、残り約半分を観てまわる。有名なブリューゲルなどの近くでは白いスモックを着て模写する画家がいたりして、ただでさえ莫大な展示数をさらに増やさんばかりである。しかし中には結構上手な人もいてそっくりに描けていた。まあとにかくどんどん進む。一年分くらいたっぷり観たからもう当分絵はいいや、もうすぐ一周だから頑張ろうと思ってふと先を見やると、私はそのあまりの光景に息をのんだ。なんと隣の絵を見上げているのはヘッツェルではないか !! (後編へ続く) ( 24.06.2002 Walter Bibilly ) < Previous Die Pilgerfahrten4 / Hetzelianer Special Next > |
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