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HETZELIANER


Die Pilgerfahrten


巡礼の旅 第4話 - 音楽の都の美術館で(後編) -

 ヘッツェルだ !! ……しばし呆然と立ち尽くす筆者。心拍数も上がってくる。痩せてひょろ長く、広いおでこには白髪まじりの毛が丸く中洲のように取り残され、高い鼻には'90年代に掛けていたあのふちの細い眼鏡がのっかっている。しかしここは1999年のヴィーン。そしてヘッツェルが亡くなったのは1992年。いるはずない、昨日墓参りしたところじゃないか……!

 深呼吸し気を落ち着かせてから、もう一度横目でこっそり見る。そっくりだ。本当に良く似ている。まて、でも本人の方がもう少し猫背かな?やっぱり別人か……。いや、もしかすると身内かもしれん。兄弟か従兄弟くらいいるかもしれない。でもここウィーンから少し東ヘ行けばハンガリーだから、似たような人がいっぱいいてもおかしくないか。だいたいああいう顔ってありふれてるのかな?つい、にっこり微笑みながら町中を行き交うたくさんの "なんちゃって" ヘッツェルたちを想像してしまった。うーん、なんだかもう訳が分からなくなってきた。

 あれこれと妄想に耽る筆者をよそに、そっくり氏は次の絵へ移動。私もひとつ隣へ。顔は絵を見る角度に固定しても目線は彼に釘付けだ。はっきりいってそこから先の絵なんて全然おぼえていない。付かず離れずでついて行く。それにしてもご丁寧にズボンの裾が短めなところまで似ているのには笑える。あ、しまった。これはTを呼んでこなきゃ、と気がついたところで彼は名画の鑑賞を終えたのか、展示室を出ていってしまった。私もつられるようにふらふらと部屋を出た。

 時計を見ると5時を過ぎていたので、さっきお茶したカフェのある2階のホールで再びTと待ち合わせた。「さっきめちゃくちゃヘッツェルにそっくりな人がいてびっくりしたよ」などと話しながら1階のミュージアムショップへ降りる。なかなか充実の品揃えでおみやげに良さそうな手頃なのもいろいろある。今みてきたばかりの様々の絵が印刷された葉書や、ミュシャの絵柄のコースターなんかどうかな、いやいや、Tシャツにマグカップも毎日使えていいかも…。旅先だと気が高ぶっていて、何でも欲しくなってしまうようだ。

museum

 とそこへ先程のヘッツェルそっくり氏がやって来た。「(小声で)ほらT、あの人だよ、見て!」「え、あの人?」「瓜二つだろう?」もはや買い物どころではない。しかしあれこれ選ぶふりはしながら、ふたりしていろいろな角度からしっかり彼を鑑賞(?)する。どうやら連れはいない。当の本人はそんな挙動不振の我々には全く気が付かぬ様子で、ごく自然にミュージアム・ショップ見物を楽しんでいる。これだけ見ていてよく怪しまれないもんだ。もしかしたら本当に遠い親戚くらいだったりするかもしれないから、名前でも聞いてみようか、とか「尊敬する人にとても良く似ているので…」とかなんとか正直に言って握手だけでもしてもらおうか、あるいは写真を撮らせてもらうのも記念になるな、等々考えたが結局どれも実現できなかった。自分の勇気のなさを恨めしく思うばかりである。

 そして閉館の時間になり、彼も去ってしまい、まだ少々興奮ぎみの我々も外へ出た。すっかり暗くなっている。そしてろくにみやげも買ってないことに気がついた。まあいいか。いつも写真や映像で見るヘッツェルはどうがんばっても平面だから、たとえそっくりさんでも実物大の、しかも立体で見れるなんてすごい収穫だった(ということにしておこう)。やっぱり本場は違うね。いや、待てよ、もしかしたら、我々にしか見えてなかったりして……。

( 29.06.2002 Walter Bibilly ) 

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